雨が降っている。 夜明け前から降りはじめ、今でも止む気配はない。 私は洞穴の中、コライドンとともに雨をただ眺めていた。 雨でも眺めていませんか、とわざわざ誘ったわけではなく、食事が終わり、話のたねも尽きてしまって何もすることが無くなった挙句、自然と外の風景に目が移ったのだ。 隣のコライドンを横目で見ると、かれもまた、洞穴の外にできた水溜まりに模様が描かれる様子を寝転がりながら見ている。
…………。 時間がただ過ぎていく。 雨は幾分か強くなっているようだ。 しかし私たちの状態は変わらず、無言でただ外を眺め、洞穴に弱くこだまする雨音を聞き、湿る土のにおいを感じ取るだけ。 この状態がいつまで続くのか……、と思い始めた時、隣でどさっ、と音がした。 反射的に音の方を向くと、コライドンは仰向けになっていた。 脱力している。
「コライドン?」
呼びかけるも、反応はない。 急いでコライドンの側に寄り、どうすべきか考えようとしたが……
「……すぅーっ…… すーっ……」
……寝落ちだったようだ。 呆れのため息。 一瞬でも気が動転してしまった私がバカのようだ。
コライドンには、出会ったときから振り回されてしまっているような気がしてならない。 ペースを乱されることを嫌っていた私は当初、彼と長く共にいることは無いだろう、と思う時もあった。 しかし、なぜだか関係が続く。 コライドンのペースに乗ることも悪くない、と考えはじめる。 コライドンの居ない生活が想像しづらくなる。 先ほどのため息も、呆れの他に安堵もどこかに混ざっていた。
コライドンは、私に対してどのような感情を抱いているのだろうか? 面と向かってそれを訊く勇気はない。 訊くことができたとして、もし好ましく思っていないと返されたら、この距離感がじわじわと壊れていくような気がして。 でも、もし私と同じ感情を抱いていたとしたら。
…………心がもやもやとした何かに包まれる。 私は、その”何か”を説明できる単語を持ち合わせていない。 コライドンと共に過ごしていけば、この”何か”が分かるときが来るのだろうか。
雨はさらに強くなっている。 悶々とする私の思考が反映されているように思えて仕方なかった。 しかしコライドンは全く気にせず、いびきをかき熟睡している。