「進化できるレベルになったようですね」

最近、体の底から何かが湧き出ているような感覚があり、それを不思議に思って病院に行き検査を受けた結果、ゾロアークである医者からそう言われた。

「どうされますか? 進化していきます?」

以前までは、進化は基本的にある程度まで身体が成長し、強い決意や心情に大きな変化を来した時のみ可能とされていた。 しかし最近になって進化のメカニズムが解明されたことで、それに関係なく、身体に負担をかけずに進化ができるようになった。

今ここで進化するか決めるにはまだ情報が足りない。 自分が進化できるようになるとは思ってもいなかったし、何よりこんな地味な体調の変化が、進化が可能となった事を示すサインとは意外だった。

自分が進化すると何になるのか、医者に聞く。

「フローゼルという種族に進化します。 姿をご覧にいれましょう」

目の前でゾロアークの形をしていたものが光に包まれ、数秒後にはフローゼルという種族に姿が変化していた。

「浮き袋がかなり大きくなってますね。 ブイゼルの浮き袋では首から上を水面上に出すのみでしたが、フローゼルのものは仰向けやうつ伏せになって体のほぼ全体を水面上に出せる…… というのが大きな違いでしょうか」

フローゼル(元ゾロアーク)は自分と姿を交互に見比べる。

「進化すると基本的な身体能力が上がりますから、怪我しにくくなるメリットがあります。 あと……」

「これは私見ですが…… 周りからの視線が変わりますね」

フローゼルは辺りを気にするように見回し、声を小さくしてそう話した。

ちょっと考えさせてください、と断りを入れて自分は腕を組んで目を閉じ、その場で少し考えることにした。 そうしている間にもフローゼルは小さめの声のまま話を続ける。

「周りからの視線が変わる……というのは別に変な意味ではありませんよ。 はっきりと言うのであれば、子供を見る目から大人を見る目に変わります。 店に入っても扱いが変わります」

たしかにこの姿では、店で商品を探すために店員に話しかけても子どものような扱いを受ける事が多かった。

「進化前と進化後で見た目が大きく変わる方もいらっしゃいますから、見てくれを目的として進化したいと相談される方もいます」

フローゼルは等身も上がって浮袋もひれも尾も大きくなっている。 がっしりとした体にはなるだろう。

「私もゾロアから進化して、今こうしてゾロアークとして生活していますが、当時は年齢を確認される場面が減ったりとか、相手の私に対する扱い方が変わったのがまず印象に残りましたね」

どうでもいいことかもしれないが、ゾロアークはどのタイミングで進化したんだろうか?